手癖をメタ認知することの重要性
最近、新しい奏法や音楽理論をしっかり学ぶために、初めて本格的なギターレッスンに通い始めました。
自分は15歳からギターを弾き始め、それなりに長い経験があって「15年以上弾いてきたんだから、それなりにできるだろう」と謎の自信を持って臨んだレッスンでしたが、課題として出されたRoom 335がマジで全然弾けないんす。
コーチからは「弾き方がおかしい」「無駄な動きが多い」と指摘されてます。
確かにコーチの演奏と比べると明らかに違いがあるのですが、どうしても修正できない。無意識のうちにいつもの弾き方に戻ってしまう。
つまり、15年という歳月が培った「手癖」が、新しい領域への適応を阻害しているのです。
プロダクトマネジメントにおける「手癖」
これを仕事、プロダクトマネジメントに置き換えて考えてみます。
プロダクトマネジメントには「こういう時はこうする」という絶対的な正解はありません。状況に応じて最適な方法を選択する必要があります。
でも、毎回じっくり考えていてはスピードも出ないし、疲れてしまう。
そこで我々は経験の中で「自分のやり方」をストックしていき、ある程度条件反射的に対応できるようになっていくと思います。ダニエル・カーネマンの言う「システム1」のような直感的な思考プロセスですね。
これが機能しているうちは効率的かつ効果的なのですが、問題はこれが「手癖」となり、必ずしも最適解ではないのに同じやり方に固執してしまったり、新しい状況で全く適用できなかったりすることなんです。
PMによくある「手癖」とその落とし穴
PMの世界でよく見られそうな「手癖」をいくつか挙げてみます
- すぐに機能追加で解決しようとする癖:問題が起きると「新機能を追加しよう」と反射的に考えてしまうが、時には既存機能の改善や削除が正解かも
- お気に入りの打開策に固執する癖:何かに煮詰まったらユーザーインタビューやA/Bテストだけで打開しようとしてしまう
- お気に入りのフレームワークに固執する癖:特定のフレームワーク(例:ジョブ理論、RICE、KJ法など)に慣れると、どんな問題もそのフレームワークで解決しようとしてしまう
- 同じステークホルダーにばかり相談する癖:話しやすい人や意見が合う人にばかり相談してしまい、多様な視点を逃してしまう
ちなみに自分の場合は「何でもかんでもすぐに図解する」という手癖があるんです。自分のMiroボードはいつもこんな感じ。

自分が理解しやすくなるし、他者にも伝わりやすくなると思ってそうしているのですが、実はこれが裏目に出ることもあるんですよね。
図解はどうしても抽象度が高くなるため、テキストで漏れなく網羅的に書いたほうがいいシチュエーションもあるんです。後から考えれば簡単にわかることなのに、条件反射的に「よし、まず絵を描こう」と動いてしまい、結果的に無駄な時間を費やしてしまった経験があります。
なぜ「手癖」は生まれるのか
「手癖」が生まれるメカニズムは実はシンプルです。我々の脳は効率を求めるので、一度うまくいった方法は「成功パターン」として記憶し、似た状況で自動的に適用しようとするんです。これは認知的な省エネであり、基本的には合理的な仕組みなんですよね。
特にプロダクトマネジメントのような複雑な判断が求められる仕事では、すべての選択肢を毎回意識的に検討していたら疲弊してしまいます。そこで脳は「ショートカット」を作り、過去の成功体験をベースに自動的に判断するようになるんです。
問題は、この自動化されたパターンが状況の変化に対応できなくなることで、そうなったら上手くいくものも上手くいきません。
この「手癖」に事前に気づければ修正できますが、気づけないとどんどん体に強力に染み込んでいき、修正が難しくなっていくんですよね。
自分の15年以上の「独学ギター奏法」は、Room 335みたいなジャジーな曲のフレーズには全く適していないことがわかりましたが、全然修正できないんす。ゼロからギターを始めた方が早いんじゃないかと思うぐらい。
ただ、この「手癖」に気づくのは独力では難しいものです。実は、この曲を宿題にされて最初のお披露目の際は、80点くらいのクオリティで弾けてたんです。なので「もうちょっと練習すれば完璧になる」と思ってました。つまりこの時点では「手癖」には気づけてないんです。
ただその後、どうやっても80点からクオリティが上がらない。そこで相談したら上述の通り「弾き方がおかしい」「無駄な動きが多い」と言われ、フォームの修正から入りました。まだ修正に手こずってるのでクオリティは上がってないですが、フィードバックを受けて初めて「手癖」に気づけたんです。
なので、この「手癖」に気づくには、誰かのフィードバックをもらうか、自分でメタ認知するしかないんですよね。
メタ認知の実践方法
具体的には以下のような方法が効果的かなと思います。
- 意思決定ジャーナルをつける:重要な決断をした後、なぜその選択をしたのか、どのような思考プロセスだったのかを記録し、自分のパターンを見出す
- 多様なフィードバックを求める:異なる背景や経験を持つ人からフィードバックをもらうことで、自分では気づかない「手癖」を炙り出す
- 意図的に異なるアプローチを試す:例えば「今回はあえて図解せずに文章だけでまとめてみよう」など、意識的に普段と違うやり方を試してみる
チームの「手癖」にも注意を
個人だけでなく、チーム全体にも「手癖」は存在します。例えば
- いつも同じ形式の会議を繰り返している
- 特定のチームの意見が常に優先される
- 問題が起きると決まったソリューションに頼る
以前体験したのは、あるチームでは、「ユーザーテストの結果が出るまで次に進まない」という厳格なルールが「手癖」となり、スループットが大幅に低下するという問題が生じていました。チーム内で「もっと柔軟にやっていいんじゃない?」という振り返りを経て改善しましたが、こういうパターンはよく見ると思います。
「手癖」を味方につける
「手癖」は必ずしも悪いものではありません。自分の「手癖」を理解し、意識的にコントロールできれば、それは強力な武器になりますが、時に成長の妨げになることもあります。
ギターの練習で気づいたように、長年の経験が必ずしも正しいとは限らないんです。常に自分の「手癖」を意識し、メタ認知することで、より柔軟で成功の再現性の高いプロダクトマネージャーになれると思い、日々鍛錬して参ります。
とにかく早くRoom 335を弾けるようになります。
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P.S.
突然ブログを書いたのは、「Cursorをフル活用してみる」という目的があったためです。
上の文章の大半はCursorのclaude-3.7-sonnet先生に書いていただいたものです。
自分の考えてることを雑多にメモして、壁打ちしながらどんどん追記してもらって出来上がりました。
あと過去のブログ記事から自分の文章の文体の特徴も抽出して、ファイルに置いておき、都度それを読み込むことで精度の高い文章を書いてくれるようになりました。
文体ガイドライン:
文体:カジュアルで親しみやすく、読者との対話を意識したスタイル
一人称:「私」ではなく「自分」を使う
語彙:専門用語を適宜使用しつつ、一般読者にも理解できるよう丁寧に説明する
文章構成:短めの段落で、見出しや箇条書きを活用し、読みやすさを重視する
トーン:情熱的で前向きだが、一人語りのような語り口
語尾:フレンドリーな雰囲気を出すため、「〜ですよね」「〜なんです」「〜と思います」などを多用し、逆に「〜ましょう」「!」などは避ける
Cursorいいすね。使い倒していきます。