もくもくプロダクトマネジメント( @Nunerm )

プロダクトマネジメント・エンジニアリングマネジメントなどについて黙々と

やりづらい環境でも地味に地道に頑張るPMたちへ

この記事は地味PM Advent Calendar 2022の19日目のエントリーです。

 

グロービスでPMをやっている久津と申します。

地味PM meetupの初回でも登壇させてもらいました。

 

地味PMの名に恥じぬよう、今日も地味で普通のことを書きたいと思います。

ためになる話もエモい話もありませんのであしからず。



ところで、あなたは成果を出せていますか?

いきなり圧が強くてすいません。

ご存知の通り、プロダクトマネージャーという役割にはプロダクトの成長などの「成果」が求められます。そのためにみなさん日々奮闘されていると思います。

いくら機能をリリースしても、いくらイケてるプロダクトビジョンを作り上げたとしても、プロダクトや事業がグロースしなければ意味はありません。

 

ですが、そんなに簡単に成果って出ないですよね。

そんなに簡単な仕事ではないですよね。

 

プロダクトマネージャーにとって、なかなか成果が出ない時期はかなり精神的にきついものです。ついつい「自分の立てた仮説が根本的に間違っているのか?」「あの時の判断が失敗だったのか?」「もしかして自分にはまだ十分なスキルが備わっていないのではないか?」と考えて落ち込んでしまうこともあります。

ただ、このように疑念や不安が「自分」に向いているのは良い行い、良い問いかけだと思っています。もちろん過度に自分を責め立ててパフォーマンスやメンタルが崩れてしまってはダメですが、適度な内省はプロダクトマネージャーにとって大事なことです。

 

一方「いつもステークホルダーが邪魔してくるから成功しないのではないか?」「うちの開発チームのパフォーマンスは低いのではないか?」「この市場にはもうチャンスがないのではないか?」のように、周りの環境が原因だと考えることもあるでしょう。これについては一概に良いも悪いも言えません。

大した分析もせず、自分の可愛さのあまり他責にするのは問題外ですが、本当に「やりづらい環境」であり、そのせいで成果がなかなか出ない可能性は確かにあります。それであれば、そこの解決に向けて動くのは当然のことです。

 

ですが、自分を変えるより周りを変えるほうが難しいのです。

 

成果を出すために周りを変えたいけど時間がかかる。その間も成果が出ない期間が続く。プロダクトマネージャーとしての自信がなくなっていく。気づけば年を取っていく…

 

「よし、すぐ成果が出そうなやりやすい環境に転職しよう」

 

こう思ったことのある方も多いのではないでしょうか?

もちろん私も何度もありますし、それが悪いことだとも思いません。

 

けど、この記事で私が言いたいのは

「やりづらい環境でも成果を出すために地味に地道に土台づくりをするPMも尊いよね」

ということです。

 

「やりやすい環境」と「やりづらい環境」の違いは何か?

この問いに対する答えはいろいろあります。事業ドメインやプロダクトのフェーズ、マーケットの違いや組織の規模など、様々な要因によって決まります。

 

その中で、この記事では「成功体験のバラツキ」をピックアップして考えてみます。

 

経営陣やチームメンバー、ステークホルダーとどれくらい同じような成功体験を持っているかが、プロダクトマネジメントの「やりやすさ」「やりづらさ」を決める気がしています。

 

例えば、プロダクトバックログの優先度について揉めることが増えてきたので、ICEスコアなどのスコアリングルールを導入して優先度の合理性を可視化しようとしたとします。もちろんスコアリングは万能ではなく、スコアの付け方などにはコツが必要で、うまく運用しないと逆効果になることもあります。

周りのメンバーにスコアリングの成功体験を持つ人が多ければ、「いいね!前の会社で使ったことあるけど、スコアリングは難かったから気をつけながら使おうねー」みたいにあまり抵抗なく導入・運用できるかもしれませんが、誰もこの成功体験を持っていない場合、導入の際に丁寧に説明する必要があり、そこで時間がかかります。

仮に導入が済んだとしても、その後のスコアリングの運用が意味を成すようになるまでまた時間がかかります。スコアの付け方のコツは知識として得るというよりは、経験から学ぶ要素が大きいためです。「経験から学ぶ」類のものは文字通り「経験」をしないと理解が難しいのです。つまり、一度経験して失敗して学ぶサイクルを経ないと腹落ちしません。ここも時間とエネルギーがかかるポイントです。

さらに、これに関して失敗体験を持っている人がいる場合や、他の方法での成功体験を持っている人がいる場合、この大変さはどんどん増していきます。

 

別の例で自分が直面したケースは、オフショア開発の検討です。プロダクト開発組織のスケールを目的として、オフショア開発の検討を進めようとしましたが、想定外の時間がかかりました。

私は前職でオフショア開発での成功体験があり、マネジメントのコツやリスクもある程度は知っているつもりでした。一方で一部のメンバーは5年以上前(私がジョインする前)にオフショア開発をトライアルで運用しており、その際に大失敗をしていました。それが故に、オフショア開発の検討自体に反対する声が多かったのです。

一つ一つ情報を整理して丁寧に議論を進めましたが、やはり各々の成功体験・失敗体験がバイアスになって、必ずしも毎回建設的な議論にはなりませんでした。最終的に組織の総意としての結論は出せたのですが、かなりの時間とエネルギーを使いました。

 

「やりづらい環境」でも成果を出せるPMって凄くない?

このように、成功体験が揃っていない環境では、何か一つを進めるのに相対的に多くの時間とエネルギーがかかります。これが「やりづらい環境」の一因となっています。特にプロダクトマネジメント領域やプロダクト開発は環境間での再現性が低いので、成功体験のバラツキが起きやすいのかなと個人的には思っています。

また、これはあくまで「成果を出すための土台づくり」のような活動なので、時間とエネルギーをかけて解決してもすぐ成果に繋がるかどうかはわからず、組織内のプライオリティも高まりにくい傾向にあります。

 

この状況でなかなか成果に繋がらない状態が長く続くと、将来に絶望して途中で心が折れてしまうこともあります。

けど、これはこの環境においてプロダクトが成果を出すために、通らなければならない道です。近道はありません。

 

 

 

…この辺りで「やりやすい環境への変え方」みたいなTIPSが書かれると思っていませんか?

 

 

 

安心してください。

全然わかりません、そんなこと(´・ε・`)

 

 

 

その環境の特性やPMの信頼貯金の状況など、色々な変数の掛け算で打ち手も変わってくるので、どんな環境でも聞く銀の弾丸などありません。それを考えて実行するのがPMの一つの役割なんじゃないかなと思います。

なのでこの状況に文句を言っても仕方ありません。「気づいたらみんな同じ成功体験を持ってやりやすくなった!」みたいな都合のいい奇跡は起こりません。愚直に地道にやるしかないと思っています。そしたらいずれ成果が出るスピードが飛躍的に上がる時期が来るかもしれませんし、来ないかもしれません。それでもやるしかないのです。

 

また、必ずしも「成功体験が揃っている環境が優れている」というわけでもありません。仮のその揃っている成功体験が市場で通用しなかったら、次の打ち手がなくなってしまいます。成功体験の多様性はアジリティを生み出すのです。

 

 

であれば「成功体験がバラバラでやりづらい環境でも、着実に前に進められるPM」ってめっちゃ尊くないっすか?それができるようになったらめっちゃ強くないっすか?

 

 

この記事で言いたいのはこれだけですd(゚∀゚d)

 

 

もちろん「成果を出さなくていい」と言いたいわけではないです。プロダクトマネージャーである以上、成果には強くこだわってほしいです。

「成果を出すために着実に前に進めてるなら、現時点で成果が出てなくてもそこまで自分を卑下することはないし、その経験は武器になるかもよ」と言いたいだけです。

 

頑張ろうぜ、地味PMたち

今回、このような内容の記事を書こうと思ったのは、この数年で以下のような経験をしたためです。

  • 副業で複数の会社をお手伝いしてきた中で、ソフトウェアプロダクト事業の成功体験を持った人が経営者であるスタートアップと、新たにDXを推進したい非テック大企業では、同じようなことを一つ進める際のコスト差が想像以上に凄まじかった
  • とあるVCの方に「ソフトウェアプロダクトに縁のなかった業界までDXの機運が高まっているが、本当に何をすればいいかわからない経営者が多い」と言われた
  • 大企業や非テック企業で頑張ってるPMの方から相談を受ける機会があり「今の環境ではやりたいことを進められないから、キラキラしたメガテックベンチャーに行きたい」と言う人がかなり多かった

 

つまり、プロダクトで事業を伸ばしたい組織が新しい市場や領域にまで増えているのに、そういうところで活躍して成果を出しているプロダクトマネージャーは多くなく、逆に自己肯定感が著しく低くなってしまっているのではないか、ということを思ったわけです。

これってすごく勿体無いなと思いました。そういう人たちが自信を持ってじっくり取り組むことが、より良いプロダクトが多く生み出される世界に繋がるのではないかなと。

 

 

今回の記事は新しい学びにはならないとは思いますが、地味でも成果が出てなくても日々頑張ってるPMの方を少しでも勇気づけられたらいいなと願っております。

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