もくもくプロダクトマネジメント( @Nunerm )

プロダクトマネジメント・エンジニアリングマネジメントなどについて黙々と

RSGT2021に行ってきたのでレポートをする

2020年1月6日から3日間、Regional Scrum Gathering Tokyo 2021が開催されました。

2021.scrumgatheringtokyo.org

 

もちろん…

参加しました!(`・ω・´)

初参加です!

 

 

去年と一昨年は、参加もしてないのにTwitterに流れてくるスライドを見つけてレポートをするという暴挙をしていただけだったのですが、今年はついに参加できました。


 

というわけで学びや気づきのレポートをしていきます。

 

Rethink Scrum from a Japanese cultural perspective

speakerdeck.com

 

組織文化を「場の文化」と「個の文化」にわけてスクラムを見つめ直すアプローチ。「場の文化」の支配が強すぎると同調圧力やアンラーニングの失敗などによって合理性とは反する力学が働いてしまうし、「個の文化」の支配が強すぎると共感がないためただ契約関係の中だけでの協働となってしまい、チームの相乗的なパフォーマンス向上は望めない。

要はここのバランスを取りながら、ちょうどいい「場」を作るのがリーダー(TOYOTAでいうチーフエンジニア)の役目なんだなという学び。楽天公用語を英語にした狙いが、「場の文化」に「個の文化」を取り込むためだったというのは驚きだった(英語の方が相手に合わせた表現の使い分けや婉曲表現のバリエーションが少ないため「個の文化」にシフトするとのこと)。

 

リーダーももちろんこの組織文化の中にいる一人の人間なのだが、場と個のバランスがどうなっているのか、暗黙的にどの力の支配力が強くなっているのかを、中にいながらそれに染まらずに組織を客観視して見極めなければいけない。要はシステム思考を持たなければならない。難しい仕事だなあとしみじみ。

 

“あざとくて何が悪いの?”建設的であり続けたいだけの、人たらしチームマネジメント

speakerdeck.com

チームのパフォーマンスを高めたり物事を円滑に進めるためなら、あざとく打算的に振る舞わないといけないという内容。大事なメッセージを伝えたいときは画面の40〜50%になるように映るとか、プレゼン時は資料ではなく参加者のリアクションを見るとか、非常に細かい振る舞いなんだけどこの積み重ねは本当に後からじわじわ効いてくると思う。自分も結構相手のリアクションを見ながら態度や話し方を変えるタイプなのだが、それは別に嫌われたくないとかの理由ではなく、ただ物事を早く正しく前に進めたいからだけなのよね。

組織は人間の集まりなので、どうしたって感情的で非合理な力学が働いてしまう中で、いかに建設的な状態を保てるかはこういう泥臭い人間力みたいなものにかかっている。ただこういう動きをしていると理不尽なことも多く、結構ストレスフルなのでサーバントリーダーの如く「チームがうまくいく」ことを心底願っていないと途中で心が折れてしまうかもしれない。なので、こういう「あざとい」マネージャーを見かけたら、時には優しく接してあげてくださいw

 

 

ヒット商品を生み出すプロダクトマネジメントブースター

speakerdeck.com

このセッションと及部さんの『「わからない」と共存するチーム May the CHAOS be with team』で共通していた「未知のわからないが多く存在するにもかかわらず、既知のわかる・わからないの中で意思決定をしてしまう限定合理性の恐ろしさ」は非常にいい気づきになった。だからこそ我々はスクラムアジャイルで経験主義的アプローチをしていく必要があるのだ。

たがか知れてる我々の認知能力を過信せずに、未知のわからないを問い続ける姿勢を忘れてはいけない。そのために現場に行ってユーザーの課題を探ったり、事実を集めて柔軟に軌道修正していかねばならない。アジャイルの基本を改めてぶつけられた気がしたいい機会でした。

 

スクラムにおける「完成」とはなにか?

スクラムにおける「完成の定義」について、個人的に答えのわからないモヤモヤしたテーマだったのだが、このセッションのおかげで少しモヤが晴れた。

自分のモヤモヤの内容は、品質担保のためにある程度画一的な定義が必要なのは理解しているものの、とはいえPBIの種類によっては例外がどうしても生まれてしまい「あ、これはいいや」を繰り返しているといつの間にか形骸化していく、というもの。なので完成の定義をしっかり言語化することの意義をあまり見出せていなかった。

しかしこのセッションでは形式知としての完成の定義には限界があり維持もできないと言い切ってくれて、残りの部分は人間の力で随時更新していき、最終的に共通理解にすることで担保していくべきだというお話で、スッと腹落ちした。

 

 

What’s Testing Got to do with Quality?

プロダクトの品質に対する重要な示唆に富んだセッションだった。特に刺さったのが、品質を評価するのはQAでもステークホルダーでもなく顧客であるということ、そしてテストは顧客の様々な目線に立って行う必要があるということ。文字にすると当たり前なのだが、現場では時に忘れてしまうので常に心に留めておきたい言葉。

このセッションを聞きながら以前属していたスマホアプリを作るチームにいたQAエンジニアを思い出した。この方は本当にユーザー目線に立っていて、PMやデザイナー、エンジニアが思いつかないような使い方をシミュレーションして様々な不具合を見つけてくれて本当にありがたかった。まさにユーザーの代弁者となってくれていた。

このスタンスをチーム全体にインストールしないといけないし、それを実現するために以下の記事にあるようなループを回していかないといけない。

janetgregory.ca

 

独立QAチーム1年戦記:スクラムの外からチームと組織の品質を創る道 / An Independent QA Team's 1 Year's War: Way to Create Quality of the Teams and the Organization from the Outside of Scrum

speakerdeck.com

弊社のスーパーQAチームを率いるKawarada-san。自分はまだジョインして半年でこのスライドで紹介されている事例は詳しく知らないので、客観的にすごいなーと思った。

時々社内勉強会でKawarada-sanと「QAとスクラムチームの関わり方」や「テストに対する考え方」について話をするが、個人的にはここに唯一解はなくて組織と状況に合わせて最適な距離感や関わり方を見つけていくしかないと思っている。スライドにもあるように、「丁寧なコミュニケーション」を相互に繰り返していって成長していくしかない。これからもよろしくです。

 

野中郁次郎先生のクロージングキーノート

なんか感想を書くのも憚られるほど濃密で深いお話でした…恐らく10%も正しく理解できていない気がする。しっかり書籍も拝読しながら時間をかけて自分の中に落とし込んでいきます。

とにかく受け取ったメッセージとしては、誰かが作った形式知(理論やフレームワーク)に頼るのではなく、自分たちの共感や経験から得た暗黙知によって生み出した形式知に頼っていこうということ。勇気をもらえる貴重なお話でした。

 

 

 

 

以上、レポートでした。スライドはこちらの記事にまとめていただいているのでご参照ください。

scrummasudar.hatenablog.com

 

今回書いたセッション以外にも素晴らしいセッションがあったし、参加者交流(OSTなど)でもいろいろな話が聞けたので、参加してよかったです。悔やむべきは、自宅からの参加だったので中途半端に仕事もやりながらになってしまい、ネットワーキングに全力を注げなかったこと。来年は会場に行けるといいな。

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