もくもくプロダクトマネジメント( @Nunerm )

プロダクトマネジメント・エンジニアリングマネジメントなどについて黙々と

心に刺さるビジョン・ミッションの語り方の考察

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プロダクトマネージャーとして「ビジョン・ミッションを語る」ことは非常に重要です。

素晴らしいプロダクトを創るために、ステークホルダーやチームメンバーと同じ方向を向く必要があります。その陣頭指揮を取るPMがビジョンやミッションを語らねばならんのです。これがPMが「ミニCEO」と呼ばれる一因かもしれませんね。

 

 

それはさておき…

自己紹介記事にも書いた通り、私はリクルートテクノロジーズで働いています。

で、4月は期初ということもあり、今期のビジョン・ミッションの説明があったのですが、同じ週にある事情でリクルートと関係のない企業(以下、A社)のビジョン・ミッション説明の場にも参加しました。


そこで思ったこと。


「話している内容は似ているのに、心への刺さり方が全然違う…( ;゚Д゚)」

 

リクルートテクノロジーズの方が圧倒的に心に刺さって、「やったるぞ(#゚Д゚)!」というモチベーションが湧き上がってくるのです。

 

どちらも話の構成は以下のような感じです。

・昨年の振り返り

・ミッション

・今期のビジョン

・優秀な社員の表彰

 

なのに全然違うんです。まあリクルートテクノロジーズ(以下、RTC)の社長がイケメンで話し上手なせいかもしれませんが、あまりにも違いすぎたのでちょっと考察してみることにしました。もちろん具体的な内容は明かせませんが。

 

キーワードは「距離感」「現実感」です。

 

 

 

考察1:昨年の振り返り方

  • RTC:成功したプロジェクトの紹介(写真付き)
  • A社:売り上げ目標やKPIの達成状況の説明

 

まあこれに関してはRTCが売上を求める企業ではないので違うのは仕方ないのですが、企業全体の売上やKPIの達成状況だけを伝えられても、どうしても自分の仕事や成果との距離を感じてしまうんですよね。目標達成と自分の仕事とどう関係があるのかわかりません。

それよりも「何を成功させたから目標を達成したのか」を知りたいし、それが自分が関わるプロジェクトなら皆に知ってもらいたい。なので成功したプロジェクトを紹介してくれると、「自分や同僚の仕事の結果」と「企業の結果」との距離が近いことを感じられ、目の前の仕事に対してやる気が出てきます。

あとついでに自己承認欲求も満たせますし。

 

 

考察2:ミッション

  • RTC:短い言葉、それが達成された後の世界や姿を想像しやすい
  • A社:長い言葉、どうなったら達成されるのか想像できない

 

RTCのミッションはこちらです。

非常にシンプルでわかりやすいし、これが達成された後の世界や自分自身をイメージしやすいんですよね。そして別に難しいことを言っていないので現実感がある。自分が得意なテクノロジーで世界にイノベーションを起こす姿って、IT従事者なら誰でも一度は妄想したことがあるはず。

かたやA社は長い文章で「No.1を目指す」とか「お客様のために」みたいな感じで、一見わかりやすそうだけど、なんかイメージが湧かないんですよね。果たしてNo.1になったら世界はどうなるのか?その時自分はどうなっているのか?いまいち現実感を持てませんでした。

 

 

考察3:ビジョン

  • RTC:目指す姿と直すべき問題を説明
  • A社:やりたいことをひたすら説明

 

RTCの方はかなり抽象的で、具体的なプロジェクトはほとんど語られません。その代わり目指す姿、つまり「企業としてどうなりたいか?」と、それを阻む具体的な問題が語られます。そして最後に「こういう意識で仕事に取り組んでほしい」と締めくくられます。

これはかなり刺さりましたね。全体としては抽象的なんですが、具体的な問題と期待するスタンスが話されたので、社員個人個人のそれぞれの役割の中で「どう動けばいいのか」の現実的なイメージが非常に持ちやすく、「よし明日からやろう」という気持ちを持てました。

 

かたやA社は具体的なプロジェクトを列挙し「今年はこれを成功させるぞ!」と気合を入れます。ただ「やりたいこと」だけが語られるだけだったので、それを成功させたあとのイメージは全く浮かびません。壮大なスケールのプロジェクトに対しては「そんなことできるのかな…」と感じ現実感を見出せず、やる気は上がりませんでした。もっと言えば「別に俺それやりたくないな…」とも思いました。これは前段階としてミッションが腹落ちしていないせいもあると思います。

 

 

考察4:優秀な社員の表彰

  • RTC:「成果」に焦点を当てた紹介
  • A社:「表彰者」に焦点を当てた紹介

 

本筋とは関係ない表彰にも差が見られました。

RTCの方は表彰者の成果をかっこいい動画にまとめて紹介します。成果の何がすごいのか、何に役立っているのかを役員が動画内で説明します。そして表彰者のスピーチは無し。

A社の方は成果については簡単にしか触れず、表彰者の紹介とスピーチのみでした。スピーチも「誰々に感謝します」のような感じ。

正直聞いている側は、表彰者がどういう人か、誰に感謝してるかはどうでもよくて、その人がどういう動きをしてどういう成果を出して何が変わったのかを知りたいんですよね。そして自分が持っているアイデアや今の仕事が、会社に評価されるもの(=ミッション)とズレていないかをチェックできる。つまり自分の仕事とミッションの距離感を測れるんです。そしてそれが近いことがわかると「俺も来年はあそこに…!」とモチベーションが上がるのです。

 

 

 

というわけで共通する4つのパートで考察して見ましたが、「心に刺さるビジョン・ミッションの語り方」のポイントをまとめると、

  • 話している内容に現実感があること
  • 自分の仕事や役割との距離感が近いこと

が重要であるという結論に至りました。あくまで個人的な見解ですし、たまたま私がこういうプレゼンに心を動かされるタイプであるだけで、他の人はまた違う受け取り方をする可能性もあります。逆に他の方はどういうプレゼンが心に刺さるのかを教えて欲しいです。

 

 これからプロダクトマネージャーとしてビジョンやミッションを語るときには、壮大すぎて現実感のない話、中途半端に具体化してしまって逆に現実感を感じない話、聴き手には直接的に関係がなく次のアクションの想像がつきにくい話、などは避けます。

聴き手の心に刺さるようにビジョン・ミッションを語り、メンバーの士気を上げ、いいプロダクト創りに邁進します。

 

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